整合性はもう要らない? 新型スイフトのデザインが目指す未来とは?(後編)

「革新」「大胆な進化」をテーマにモデルチェンジを敢行した新型スイフト。後半はボディの側面から話を聞きます。

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[語る人]
スズキ株式会社
四輪商品・原価企画本部 四輪デザイン部
四輪デザイン企画課 専門職 結城康和
エクステリア課 係長 新居武仁

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── 次にサイド面に移ります。コンパクトカーサイズで前後のフェンダーを張り出させると、ボディがビジーになりませんか?

「たしかにそうです。ただ、今回も基本はあくまでシンプルという考えで、その表現をロジカルなものから工芸品のような人間味のある方向にシフトしたかった。これは、コンセプトカーのレジーナのほか、実はかつてのカプチーノからも着想を得ているんです」

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── 張り出しのラインは角度によって見えないくらい微妙ですが、ちょっと曖昧では?

「ここは、もう記憶にないほど何度もやり直した部分ですね(笑)。折れ線は必要ですが、あまりハッキリした線だとバキバキと安っぽくなってしまう。室内と屋外でハイライトを繰り返しチェックし、ようやく落ち着いたのがこのラインなんです」

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── フローティングルーフや、ピラー内ドアハンドルは流行ですが、スイフトでも必要ですか?

「屋根を浮かせたいというより、ボディが低く見える効果を狙ったのです。また、近年は欧州で5ドアの比率が高まっているのですが、同時にボディに3ドアのような軽快さが欲しいという要望が増えているんです。さらに、今回はファミリー向けであるバレーノとの差別化もありますね」

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── リアランプは、縦長というよりは正方形に近く平面的になりました

「先代までのホイールアーチを巻き付けるような形状は、このボディに合わなかった。一方、新型は全高が10ミリ低く重心も下げたので、フロント同様リアパネルも水平を強調したかったんです。したがって、ランプ内のグラフィックも横基調にしています」

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── インテリアの造形テーマは?

「新型は120kgも軽量化していますから、できるだけ軽さや薄さを感じる素材としています。ただ、その分陰影が強く出る断面形状としました。カラーはいろいろな提案がありますが、まずはスイフトのスタンダードとしてブラックから始めようと」

── ボディカラーは青と赤が新色ですが、青・赤自体は以前からありましたよね?

「スイフトの特徴として、歴代とも青と赤は毎回新色なんですね。青は欧州の街並みに映えるような明るさ、赤は先代よりも黄色味を加えた鮮やかなものとしました。ゴールドやネオンブルーはイグニスの流用ですが、もっと女性に乗ってもらいたいと(笑)」

 

── 最後に。前2世代は整合性のある明快なカタチから、息の長いデザインとして評価された。今回はそこから飛び出しましたが、新型のデザインに時間的な耐久性はあるでしょうか?

「今回はすでに賛否がありますが、デザイン部ではここまで変えながら、同時にここまでキープしたという両方の想いがある。もちろん、これまで同様ロジカルなデザインでモデルチェンジする選択もありましたが、今回は別の方法の突端を示せたと思います。耐久性については、工芸的なアプローチをしたからこそ長くウケる可能性もあるかもしれませんね」

── なるほど。本日はありがとうございました。

(すぎもとたかよし)

この記事の著者

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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