二兎を追ったら二兎を得た!? 都心部ユーザーが頼れるオールシーズンタイヤとは?

年末年始に里帰りしたり、ウインタースポーツに繰り出したりと、年末年始が近づくにつれて、都心部で過ごすユーザーが積雪地帯へと足を踏み入れる機会が増えることでしょう。いや、たとえ都心部だって突然の積雪のおそれは充分にある。大事な日に限って雪が降ったりして……。と、そんなことを頭では理解しつつも、師走の忙しさにかまけて、まだサマータイヤのまま過ごしている人にこそ、こんな選択肢をオススメします。

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その名もオールシーズンタイヤ。文字通り「1年中履ける全天候型タイヤ」のことで、ヨーロッパや北米では新車に純正採用されるほど市民権を得ています。気候の変化が激しかったり、地続きで国をまたいで積雪地帯へ踏み入れるような大陸的な環境ではオールシーズンタイヤが好まれるようです。ドイツなどでは冬季の冬タイヤの装着は義務化されているといった背景もあります。

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オールシーズンの世界で30年以上もの歴史を持つ老舗グッドイヤーの「Vector 4 Seasons (ベクター フォーシーズンズ)」は、かねてよりそうした大陸的環境で圧倒的な支持を得てきました。ところが今年になって、日本のユーザーに焦点を当てた動きが注目されています。従来の23サイズに加えて、「Vector 4 Seasons Hybrid(ベクター フォーシーズンズ ハイブリッド)」となって国内生産を拡大したことで、下は13インチから上は18インチまでの合計44サイズへ。日本のニーズを検討したうえでの国内生産ということで、軽自動車から国産コンパクト〜ミドル級まで国産車へのマッチングを飛躍的に高めてきたのです。
全サイズに関してサイドウォールには「M+S(マッド&スノー)」の文字が刻印され、またヨーロッパで冬用タイヤとして認められた証であるスノーフレークマークの表記もあります。もちろん、日本でも冬用タイヤの基準を満たしていると認定されたSNOWマークも刻印されていて、チェーン規制の道も胸を張って走らせることができます。

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というわけで早速試してみました。現行型プリウスに195/65R15サイズのベクターを装着し、ウェットから圧雪路、そしてアイスバーンまでを走ってみました。グッドイヤーの純スタッドレスである「ICE NAVI6」に比べて絶対的な制動距離やグリップ力が劣る場面は確かにあります。だけれども、決して危なっかしくて危険だと感じたわけではないのが不思議なところ。その理由はリニアなインフォメーション。やわらかい雪が積もった状況下なのか、固められたアイスバーン状なのか、といった路面状況が手に取るようにわかり、滑るところはちゃんと滑るんだとやんわりと伝えてくれるので、ドライバー側で対処しやすい。滑る感覚を察知しやすいので、自然と安全運転にもなりそうです。路面環境など無視してガンガン走るのではなく、路面状況を見越しながら優しくスムーズなドライビングを心がければ、なんら不足のない実力を持っています。

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家を出た瞬間から雪まみれの豪雪地帯で生活するのなら、夏冬と相応の銘柄に履き替えたほうがいい。だけれど年に数回のウインタードライブに使い、時に出くわす都心の積雪に備える程度ならオールシーズンで充分。と、いうのが身体で納得できました。オールシーズンなだけにドライ、ウェット路面だってスタッドレスより得意で、スタッドレスっぽい高周波ノイズも少なく、そしてべたっと路面に張り付いていくようにグリップしていく様は、まるでサマータイヤのよう。通年履き通せば「ヤマは残っているのに鮮度的に寿命を迎えてしまう」ような無駄な投資が抑えられるし、常に使わないほうの1セットを仕舞っておく場所も不要になる。もはや不精者が妥協で履く類ではありません。走り好きの人も唸らせる、まるで二兎を追う者が二兎を得たかのような存在です。

(写真:市 健治/文:中三川大地)