GTの監督はレース中に何してる? チームルマン脇阪寿一監督、鈴鹿1000kmを語る【SUPER GT 2016】

W-いや、僕の場合、自由なんで(笑)。SUGOの時なんか、あんまりピットウォールには行ってないんですよ、暑過ぎたんで(笑)。

S-えーーーーーーっ!

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W-とにかく、僕はピットウォールにいることが仕事ではないんです。どこにいてもいいの。それこそトイレにいてもいいんです。僕がチームに求められていることをすればいいの。でも、ドライバーは乗らなきゃいけない。乗ってる最中にお腹痛くなったり、大変なことに僕は鈴鹿でも一回そうなりましたけど、そうなったらダメなんだけど。そういう部分では僕はすごく楽。だけど僕の仕事は全員の矢印を全て同じ方向に向けるということで、これがすごく難しい。

S-監督さんのイメージってピットウォールにずっといるイメージがありましたけど。

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W-SUGOもそうだし、その前の富士もあそこ(ピットウォール)にはほとんどいない。僕があそこにいるときはJ-SportsやGT+なんかのテレビの人が「行って欲しいなぁ」って顔をしているときだけだから(笑)。ホントに。ピットにクルマが入ってくるときはとなりのピット行って人が出てこないように周りの交通整理とかに行くし。邪魔だったらオフィシャルもどいていただいたり。
ピットウォールとかに腕組んでふんぞり返っている監督いるでしょ、高木虎之助とか(笑)。でも、僕の仕事はそういうことじゃないから。まぁ、チームによってそれぞれだけど。

W-それに監督ってSUPER GTの全てを見ることができるんで、本当に面白い。僕自身もSUPER GTのファンなんだけど、普通のお客さんは僕が知ってること、僕が考えてることをほとんど知らないでしょ。親子3代で来てくれる方もいるけど、お爺ちゃんはサーキットに来てレースが見れたかどうか、お父さんはサーキットでレース見てから家で録画が見れる。そのお父さんも今ではスマホとかでラップタイム見ながらレース見れるわけでしょ。で、その子供たちがそれくらいの歳になるともっといっぱい情報が入ってくる道具を使いながらレース観戦できるわけ。そうなってきてもまだまだ提供できる情報やサービスがあるよっていうところが、SUPER GTって未来に対して魅力的かなっと思う。

S-そんな情報、今ここでちょっと教えてもらえませんか?

W-えっこれ(今回の記事)何文字くらいある?5万文字くらいでもサワリも出せないなぁ(笑)。それは置いといて、その未来に向かって進んでいるだけでなく、鈴鹿1000kmみたいに45回も続く伝統があったりする。それも紙の上の歴史じゃなしに、その存在を感じていけるって言うのが素晴らしいことなんです。

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S-私はF1をよく見に行くんですけど、F1には無いSUPER GTの魅力って何ですか?

W-F1、面白くないでしょ(笑)。F1は日本では年に一回しかない。でもSUPER GTは海外も含めれば年に8回ある。日本人は新しもの好きで、熱しやすく冷めやすい国民性じゃないですか。その日本人が毎回すごい人数で観に来てくれる。F1は本当に楽しもうと思ったらタキシード着て観に行ける権力が必要だけど、SUPER GTはそんなことは無い。
それに感情移入しやすい。だってプリウスがフェラーリ抜いちゃうのなんて世界に無いでしょ。プリウスのオーナーさんにしてみれば腕上げてオーッってなっちゃうじゃないですか。そういう、観に来る人がいろんな感情移入できるのがSUPER GTの魅力ですね。
レース自体、ドライバー、チーム、メーカー、レースクイーン、それぞれのファン、関係者、お客さんが一緒くたになってSUPER GTなんです。サーキットなんてレースが無いときに行ったらただの殺風景な場所ですよ。そこにSUPER GTっていう村ができるんです。お祭なんてものじゃなくて、村。

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S-鈴鹿1000km、監督としての意気込みを教えてください。

W-1000kmをミス無く、チームのみんなが力を発揮できるレースにしたいな、と。

S-チームの雰囲気はどうでしょう。

W-チームの雰囲気は良くなってきていると思うよ。人には器量ってものがあってその器量に合せた仕事をしてもらう。120%の力を発揮しても1回だけなら上手く行くかもしれないけど、8戦とかだと失敗するかもしれない。今は80%で失敗しないならそれを90%でも失敗しないようにする。メンタルも含めて。
1000kmレースだとタイヤ交換が5回くらいになる。NISMOだと1回で2秒縮めて全部で10秒を得するぞっ、て考えるかもしれないけど、僕らはロスするかもしれないって考える。だけどそこを早くしてやろうとすると失敗するかもしれないし、失敗したら終わりだから、そこを上手く考えてやって行きたいですね。

S-今日は長い時間お話いただいて、本当にありがとうございました。スーパーGTを見に行きたくなりました!

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約一時間に及ぶロングインタビューでしたが、その全てを掲載するにはあまりにも多い情報量。今回は鈴鹿1000kmに関連 する部分のみを抜粋させていただきましたが、それ以外の部分も非常に興味深く面白い内容でした。その部分は改めて紹介させていただきたいと考えております。

(聞き手:島田有理 写真・まとめ:松永和浩)

【関連リンク】
2016 AUTOBACS SUPER GT Round6 45th International SUZUKA 1000km
https://supergt.net/races/index/2016/Round6/

鈴鹿サーキットSUPER GT特設ページ
http://www.suzukacircuit.jp/supergt_s/

 

この記事の著者

松永 和浩 近影

松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
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