過酷なドリフト競技で鍛えられるタイヤ性能とは?

グッドイヤーはモータースポーツと切っても切り離せない。特にここ日本での活動は見物ですね。注目すべきはD1グランプリへの参戦を持って、2001年からドリフト競技へと継続的に挑戦し続けていることでしょう。いかなるモータースポーツも、あるいは公道においても、タイヤというものはグリップさせてこそ正義でした。その常識を打ち砕いたかのように思わせたのがD1を筆頭とするドリフト競技。なぜ、グッドイヤーはそうした特殊な環境下にあるドリフト競技への挑戦を続けているのでしょうか。

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ライバル達よりも速くゴールを目指すような普通のモータースポーツとは異なる側面はあるものの、立派に勝敗の決まるモータースポーツであること。これが最大の理由だと言います。目の前に勝敗の決まるモータースポーツがあれば、企業として参戦したくなる。なんとも気持ちいいほど明快です。

加えてD1では基本的にラジアルタイヤが使われます。高速かつ派手なドリフトをキメるためには、タイヤはただ滑ればいいものではなく、むしろグリップ走行でも充分過ぎるほどのグリップ力と、いざ滑らせた時のコントロール性、そして高温高負荷であってもへこたれない強靭性など、多種多様な性能が求められます。これらの厳しい要求性能に応え続けるために、グッドイヤーは日々の研究開発をしているわけで、そうした意味では市販製品を鍛える場とも言えますね。

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グッドイヤーと共にD1への挑戦を続けてきたGOODYEAR Racing with DO-LUCKの高橋邦明選手はこう言います。

「最近の特設会場ではウォームアップできる時間や場所が充分にないんです。つまり冷えた状態からいきなりドリフトをキメなければならない。だから冷えているときのグリップ力と、発熱の早いタイヤが欲しい。そのうえで、富士などの高速ステージでは、クルマ自体の速度が200km/h、空転しているタイヤ速度は300km/hを超えます。その中でも熱ダレしない性能も必要です」

そうした過酷な条件にグッドイヤーは応えてきたわけです。グッドイヤーはD1がデビューした2001年度から今シーズンまで絶やすことなく挑戦を続け、今年2016年シーズンのD1グランプリでは、9台ものマシンがグッドイヤーのタイヤを履いて参戦しています。高橋選手のマシンで言えば、富士などの高速ステージでは1レースで80本ものタイヤを消費することもあるほどで、そうした迅速な供給体制を可能とする点もまたグッドイヤーの強さですね。

なお、今シーズンで装着される銘柄はEAGLE RS Sport S-SPEC。先の高橋選手の言葉にあるように、発熱が早いにも関わらず熱ダレに強く、強烈なグリップ力を長時間にわたりキープ。なおかつラップを重ねてもタイヤがタレない安定感こそが、自在なドリフト走行を可能とする武器になっています。

「僕らドライバーは、事あるたびにタイヤ性能に対してリクエストを出してきました。その言葉を真摯に受け取って開発に反映して頂いた開発陣には頭が上がりません。EAGLE RS Sport S-SPECの前身モデルにみられたネガティブな要素なんて、モデルチェンジのたびに見事なまでに払拭されていましたから」

今年は彼自身がリクエストした285/35R18サイズのEAGLE RS Sport S-SPECを装着した、出力性能1000psというトヨタ・マークXがD1で暴れまわっています。今のところ満足のゆく結果は残せていないものの、自分がリクエストしたサイズなだけに、絶対にこのパッケージで勝つと意気込んでいました。2014年シーズンがグッドイヤー・レーシング勢としては初となるシリーズチャンピオンに輝いた選手なだけに、その言葉には大きな期待が募ります。

D1を通じて世界中を熱狂の渦に巻き込み、なおかつそこで培われたタイヤ技術がそのまま市販品へと投下される。だからこそグッドイヤーはD1への挑戦を続けているのです。

(文:中三川 大地/写真:GOODYEAR Racing)