【SUPER GT 2015】最終戦を待たずに、オートポリスでGT300チャンピオン決定

10月31日、11月1日と月をまたいで大分県のオートポリスで開催されたSUPER GT第7戦「SUPER GT in KYUSHU 300km」。

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実はこの第7戦オートポリスは、GT300クラスのチャンピオンが決定するか否かの大きな一番でもあったのです。

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ここまでの6戦でポイントリーダーは10号車 GAINER TANAX GT-Rのアンドレ・クート選手。そしてそれを追うのが31号車 TOYOTA PRIUS apr GTの嵯峨 宏紀選手と中山 雄一選手。

この2台だけがそれまでの6戦でポイントを取りこぼしていません。言い換えれば、今年のSUPER GTはこの2台以外が全て、何らかのカタチでポイントを取りこぼしているという、サバイバルなシーズンであったとも言えるのです。

前回のSUGO戦で最大上限100kgのウェイトを積みながら6位で完走という偉業を成し遂げたGAINER TANAX GT-Rですが、予選ではヨーロッパ・ブランパンシリーズのチャンピオン「GT3世界王者」の千代勝正選手をもってしても14位と低迷しQ1で脱落してしまうという大盤狂わせ。

そんな中、予選Q1では大変な出来事が起きていたのです。

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第3戦タイ以降、とんでもない速さを身につけていた2号車 シンティアム・アップル・ロータス。普段のQ1では加藤寛規選手がQ1最速を叩き出し、鈴鹿では第三ドライバーの濱口 弘がQ1突破でQ2を加藤寛規選手につないでポールポジションを獲得した実績もあります。しかし、今回Q1を担当したのは高橋一穂選手。筆者の取材では、Q1ドライバーの発表でロータスをノーマークとしたチームが多かったことは否めません。

しかし、チームが無策に高橋選手をQ1ドライバーとしたとは考えられず、そこに策があるのでは?と、筆者は考えました。そして、まさにその通りのQ1となったのです。

予選Q1を突破した全てのマシンが昨年までのレコードタイムを上回るというとんでもない状況の中、高橋選手はQ1タイム3番手というタイムでQ2につなぎます。そしてバトンを渡された加藤選手は1分43秒001というタイムでポールポジション!2位のTOYOTA PRIUS apr GTと1000分の1秒差というスーパーフォーミュラーも真っ青な予選を繰り広げたのです。

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11月1日の決勝レース。ここでスタートドライバーとなった加藤選手のシンティアム・アップル・ロータスは手のつけられないような速さで周回を重ねていきます。そんな中、ランキング2位、予選2位だったTOYOTA PRIUS apr GTはクラッチトラブルでグリッドに並ぶことが出来ずにピットスタートとなってしまいます。

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そしてトップのまま2位の0号車 グッドスマイル 初音ミク SLSに15秒の大差でシンティアム・アップル・ロータスがピットイン。高橋選手にドライバーチェンジし、再びトップのままでコースに復帰します。

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そこに猛追してきたのが高星明誠選手の3号車 B-MAX NDDP GT-R。星野一樹選手が予選8番手から5番手までポジションを上げ、それに輪をかけるハイペースでマシンを走らせてきた高星選手。他のチームがピットインを終える頃には2番手というポジションにまで上がってきたのです。

そしてラップタイムに2秒以上の差があったB-MAX NDDP GT-Rは50秒台の高橋選手のロータースを43周目でパス、トップに浮上しました。しかし、その後急激にタイムが落ち始め50秒代後半となってくると、高橋選手のロータスが再び牙をむき始めようとします。

その時、ロータスに悲劇が起こってしまいます。GT500マシン同士が接触した際にばら撒いたと思われる破片を踏んでしまい、左リアタイヤがバースト。49週目の第1コーナーで左リアはホイールだけとなってしまい、ここでリタイアとなってしまいます。

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そんなシンティアム・アップル・ロータスに代わって2位に浮上したのが予選14番手から地道に順位を上げてきたGAINER TANAX GT-R。

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素早いピットワークも功を奏して、2位にまであげてきたのは「GT3世界王者」の千代勝正。大きく順位を落としたTOYOTA PRIUS apr GTを尻目に素晴らしい走りを見せ付けます。

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そしてフィニッシュ。5月の富士500km、6月のタイ以来のGT-R勢1.2フィニッシュを飾ります。優勝はB-MAX NDDP GT-R、2位にGAINER TANAX GT-R。

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そして3位にはStudie BMW Z4が入りました。

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今回のGAINER TANAX GT-Rの2位入賞でチャンピオンが決定したオートポリス。しかしチームランキングの2位、3位はまだ予断を許さない状況です。NDDP RACING、apr、そしてBMW Sports Trophy Team Studieの3チームが僅差で2位を狙っているという状況。

最終戦のツインリンクもてぎは、オートポリス以上に熱い戦いになりそうです。

(写真:吉見幸夫 文:松永和浩)

この記事の著者

松永 和浩 近影

松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
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