高速道路でプロボックスが飛ばしてる理由が判明【その2】

安心して出せる速度上限が高い

「あるいは。たとえばショックのカドを丸めるためにゴムブッシュをやわらかくすると、往々にしてその弊害がでます。ある手の入力への対策としてはすごく有効でも、ほかのところでは……というふうに。しっかり踏ん張っていてほしいところでぐにゃっとしたり。“グニャ感”ですね」

--ゴムで逃げるテは万能ではない、ということですね。

営業バンが高速道路をぶっ飛ばせる理由7

「そこへいくと、バン車の車体にはゴマカシがありません。ダイレクト感があるというか。おかしなガタガタやブルブルはないし、実際の速度と速度感がキレイに連動して変わります。オトシン(音と振動)環境に関していうと、バン車のそれは、単に“うるさい”といって斬って捨てていいようなものではないと思います」

--でも、バンはシートが安っぽかったりしますね。

「見た目は安くても、ヘンにこねくりまわした作りになっていないぶんスッキリしています。長時間体重がかかっていてもツブれにくいスポンジがクッションに使われていたりもして、だから、いいヤスモノ感といえます」

--んー。

「重たい荷物を運ぶためのクルマであるからには、重たい状態でちゃんと走れないといけません。つまり、それなりの駆動力が必要になります。ということで、バン車はトランスミッションのギア比の設定が低めです」

--最近の乗用車と違って、エンジン回転数の極端に低いところを使って巡航するような設定にはなっていない、ということですね。

「同じスピードで走っていても、乗用車よりもエンジンの回転数の高いところを使っているわけです。そこはトルク特性上余裕のある、おいしい領域で、したがって、積み荷が軽い場合は気持ちよく加速してくれます。レスポンスがいい。また、アクセルペダルを離すとしっかりエンジンブレーキがききます。“空走感”がない」

--そういうクルマだから運転しやすくて、だからついついトバしてしまうことにもなりかねないと。

「運転手にとって速度の管理がしやすいクルマになっている、ということです。絶対的な速さというよりは、安心して出せる速度の上限が高い。エンジンの特性に関しても、バン車はカタログ上の5psや10psの違いよりも低速トルク重視です。ガソリンエンジンでも、普段使うところでしっかり力が出るようになっています」

--はい。

この記事の著者

編集長 小林和久 近影

編集長 小林和久

子供の頃から自動車に興味を持ち、それを作る側になりたくて工学部に進み、某自動車部品メーカへの就職を決めかけていたのに広い視野で車が見られなくなりそうだと思い辞退。他業界へ就職するも、働き出すと出身学部や理系や文系など関係ないと思い、出版社である三栄書房へ。
その後、硬め柔らかめ色々な自動車雑誌を(たらい回しに?)経たおかげで、広く(浅く?)車の知識が身に付くことに。2010年12月のクリッカー「創刊」より編集長を務める。大きい、小さい、速い、遅いなど極端な車がホントは好き。
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