スカイライン「200GT-t」(4気筒ターボ)について知っておきたいポイント5つ

日本における現行スカイラインはこれまで「350GT」と呼ぶハイブリッドだけの展開でしたが、5月末に“ハイブリッドではない”2.0Lターボエンジンを搭載した「200GT-t」を追加。2つのパワートレインが選べるようになっています。

先日、その「200GT-t」に峠道を中心とした環境で試乗してきたので、5つのポイントをお伝えしましょう。

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●パワートレインはダイムラー製

実はこの「200GT-t」に積んでいるエンジンやトランスミッションは日産製ではありません。ダイムラー、つまりベンツ製。Eクラスや新型Cクラスなどに搭載されているものと基本的に同じ(ただしCクラスと違ってリーンバーンではない)ユニットです。

日産の車体にベンツのエンジン……違和感が拭えないという人もいるかもしれませんが、実は日産&ルノー連合とダイムラーは2010年に提携していて、それが形になったモデルがこの「スカイライン200GT-t」というわけです。当初は日産社内でも通常以上に極秘にプロジェクトが進められていて、周囲に気づかれないようにとあるスポーツの名称あてはめた隠語で呼ばれていたのだとか。

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●エンジンは必要にして十分……以上のパワー

ターボ付きとはいえ2.0Lエンジンではパワー不足なのでは? そう感じるかもしれませんが、乗ってちょっとアクセルを踏み込めばその心配は杞憂だとすぐに理解できるでしょう。最高出力は155kW(211馬力)、そして最大トルクは自然吸気3.5Lエンジンにも匹敵する350Nmと十分以上。

実はこの出力/トルクはメルセデスベンツ新型Cクラスのトップグレードである「C250 SPORT」と同じなのです。これで遅いわけがありません。っていうか、十分に速い! 勾配の険しい「箱根ターンパイク」という峠道もグングン登っていきました。

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 ●パワーステアリングは電動油圧

ハイブリッドモデル「350GT」の日本仕様は、全車とも「ダイレクト アダプティブ ステアリング」を採用。ハンドリング・バイ・ワイヤとも言われる世界初のその技術はとても凄いんですが、「200GT-t」にはコンベンショナルな機構に油圧式のパワーステアリングを組み合わせて採用しています。どうして流行の電動パワーステアリング(燃費面に有利)でないかといえば「(若干ながらクセのある電動パワステに比べて)よりリニアな油圧式がスカイラインの求める走りの性能に適しているから」とのこと。

燃費とトレンドに反してまで油圧パワーステアリングにこだわるとは、さすがです。ちなみに油圧といっても、エンジンの力でなく電動モーターで油圧を作る「電動油圧式」としているのがポイントですね。燃費への影響を減らすと同時に、モーターの回転速度を変えることで「低速域では軽い力、高速域では手ごたえ重視」など状況に応じて操舵力に変化をつけるのだそうです。

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●ハイブリッドより広いラゲッジルーム

ハイブリッド車「350GT」は後席の後ろに駆動用バッテリーを積んでいる影響で一般的なラージセダンに比べるとラゲッジルームが狭いんです。

しかし「250GT-t」はバッテリーを積まない分だけスペースを拡大。「350GT」に対して100L増しの500Lとしました。9インチゴルフバッグを4つや特Aサイズのスーツケースを2つ積めるなど、広さはちょっとした自慢。センターアームレスト部分を室内と貫通して釣竿やスキー板など長尺物を積める機構を標準装備したほか、後席を倒せる機能もメーカーオプションで設定して使い勝手が高まっていることにも注目ですね。

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●価格はハイブリッドモデルより約80万円安い

そんなハイブリッドモデルの価格は、383万4000円から。実はこの価格、ハイブリッドの「350GT」よりも約80万円安いんです。確かにハイブリッドの先進性や自慢の動力性能にも惹かれますが、「普通に速ければいい」というのであれば「200GT-t」のほうがより魅力的ですね。

ただひとつだけ注意点を。2.0Lターボのトップスポーツモデル「200GT-t Type SP」を選んでも、「350GT」の同グレードに装着されているスポーツチューンドブレーキは備わっていません。もちろん性能的には普通のブレーキで十分なのは百も承知ですが、見た目的には対向ピストンのキャリパーのカッコよさが欲しいと思うのでちょっとだけ残念です。

オプションでいいから設定してください、日産さん。

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(工藤貴宏)

この記事の著者

工藤貴宏 近影

工藤貴宏

1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに執筆している。現在の愛車はルノー・ルーテシアR.S.トロフィーとディーゼルエンジンのマツダCX-5。
AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。
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