電動アシスト車いすに次世代モビリティの可能性はあるか?

ヤマハ発動機から、電動アシスト車いすがリリースされました。

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これまでもヤマハでは、電動アシスト自転車の先駆けとして「PASS」を発売し、人間の力を助ける電動アシストのノウハウを蓄積してきましたが、それを車いすに応用したものが今回の製品です。

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が、同社の電動アシスト車いすへの歴史は長く、これまでは他の車いすに装着するアシスト車輪ユニットの形での参入でしたが、今回は車いすの車体まで専用設計した「JWスイング」がリリースされた事となります。

車いすに電動アシストがあることで、力の弱い人でも車いすを使えるようになるばかりでなく、遠くまで出て行こうとする、積極的でなかった人が行動的になるなどや、バッテリーが外から見えない、ジョイスティック等がないので電動車いすには見えない、などの面で、より多くの人が社会参加できる可能性まで広がるわけです。

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車いすに乗った事がなくても後ろから押したことがあるだけでもわかると思いますが、車いすを動かす負荷は、その路面状況やほんの少しの傾斜で大きく変わります。

その、ほんの少しの上り、平でも絨毯のようにフカフカな場所では、グッと重さが増します。こういうちょっとした場面はほとんどの移動を車いすで行う人にとっては大きな負担でしょう。これを軽減してくれるならばそんなにいいことありませんよね。一般の人でも一度電動アシスト自転車に乗ったらフツーの自転車には乗りたくなくなるとよく聞くのと同じだと言います。

YAMAHA JW-Swing_20実際に乗ってみると、アシストの自然さにまず気付きます。理屈でわかっているので動き出すと同時にアシストしてくれるのはわかりますが、それを考えないと車いすを動かす力ってこんなもんかな、と思ってしまうほどです。

上り坂になるとありがたみはハッキリしますが、これも言われないと「このくらいの勾配ならこれくらいの手の力で進むんだっけ」と慣れちゃえばわからないくらいです。

下りはというと、そのままスーッと降りる感じよりはややエンジンブレーキがかかる感覚。この辺も「動力を持った乗り物」を作ってきたメーカーのノウハウが感じられます。

曲がるときの曲がり方、逆から見れば左右に違った力が入力されたときの直進性ですが、これは左右の腕の力等で予め調整が可能です。

この他にも、アシスト量はPCで微調整が可能でそれを2段階「強・弱」などと記憶させ本体で切り替えが可能だったり、バッテリーはリチウムイオン、ニッケル水素など選択も可能です。

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実際、どのように動くのか、モデルの坂井裕美さんの運転(?)をご覧下さい。

将来的には、必ずしも足が不自由な人だけでなく、ちょっと出掛けたいけどやや足腰に不安がある人や、もしかしたら単純に楽に移動したいという人のニーズも飲み込んで、ある程度「普通の乗り物」になっていく可能性も感じられます。

次世代のパーソナルモビリティが様々に開発されていますが、案外車いすに電動アシストがつけば、大きな可能性をもっとも発揮するのかも知れませんね。

(小林和久)

JWスウィング

●シート幅390mm●シート奥行400mm●バックサポート高365mm●全長×全幅×全高1,000×580×765mm●重量23.9kg(バッテリー含まず)●使用者最大体重(積載物含む)100kg●駆動方式:後輪直接駆動●操舵方式:左右ハンドリム操舵●制動方式・制動アシスト+手動車いすブレーキ●駆動車輪径22・24インチ●モーター:ACサーボモーター・30分定格出力24V 110W×2●アシスト範囲0~6km/h未満●実用登坂角度6度●連続走行距離20km(ニッケル水素使用時)/40km(リチウムイオン使用時)●充電時間(常温25度)約2.5~3時間(ニッケル水素)/約4.5時間(リチウムイオン)●電源AC100V~240V 50/60Hz●充電方式:急速充電方式

<バッテリー>
●ニッケル水素/重量2.9kg/電圧・容量24V・6.7Ah
●リチウムイオン/重量3.6kg/電圧・容量25.2V・11.2Ah

<価格・発売・計画>
●36万3000円〜(非課税)●発売2014年6月10日〜●販売計画200台/月

問い合わせ:ヤマハ発動機株式会社JWビジネス部・フリーダイヤル0120-808-208

 

 

 

この記事の著者

編集長 小林和久 近影

編集長 小林和久

子供の頃から自動車に興味を持ち、それを作る側になりたくて工学部に進み、某自動車部品メーカへの就職を決めかけていたのに広い視野で車が見られなくなりそうだと思い辞退。他業界へ就職するも、働き出すと出身学部や理系や文系など関係ないと思い、出版社である三栄書房へ。
その後、硬め柔らかめ色々な自動車雑誌を(たらい回しに?)経たおかげで、広く(浅く?)車の知識が身に付くことに。2010年12月のクリッカー「創刊」より編集長を務める。大きい、小さい、速い、遅いなど極端な車がホントは好き。
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