NEXCOがEVの「ワイヤレス充電」実証試験開始 !

以前に「急速に進む? 日産がEVワイヤレス給電を2014年に採用か?」でお伝えしたとおり、日本の自動車大手ではEVの課題の一つである「充電の効率化」に取り組んでおり、その解決策として「非接触充電」の実用化に向けたベンチャー企業との共同研究が進んでいます。  

日産リーフ

例えば2011年4月にはトヨタ自動車が米マサチューセッツ州の「WiTricity(ワイトリシティ)」社と非接触充電技術の実用化と普及促進を目的に技術提携。 

非接触充電のイメージ(出展 トヨタ自動車)

またトヨタに続いて2011年6月にはIHIが、さらに9月には三菱自動車がWiTricity社との研究開発で合意。以下3項目を中心に研究開発を進めている模様。

・非接触充電インフラのあり方
・非接触充電に関する法的な面の課題の明確化と提案
・受電装置を組み込んだEV車体と、送電装置との充電実証

WiTricity社が開発・商品化した「磁界共鳴方式※」は日産が採用を予定している昭和飛行機工業製の「電磁誘導方式」に比べて電力の伝達距離や効率が高いのが特徴で、3kWを超える電力を20cm離れても90%以上の効率で送電出来ると言います。 

磁気共鳴方式 非接触給電(出展 TDK)

地面に埋め込んだ定置式充電器(送電側)と車載機器(受電側)にコイルとコンデンサを設け、磁界共鳴させて電力を伝送するもので、駐車時の送電側機器と受電側の車載機器の位置ズレや双方の角度を厳密に合わせる必要が無く、伝送形態の自由度が高いのが特徴。 

駐車場への設置は勿論、交差点の手前数100mに渡ってコイルを道路に設置すれば、クルマが減速した際に充電が可能となり、街中を走行しながら効率良く充電することが出来る模様。 

また高速道路に専用の充電用車線を設けて送電コイルを並べれば理論上、高速道路を走行しながらの給電も可能に。 

実際、NEXCO中日本では6つの団体と協力して高速道路に於けるワイヤレス給電についての研究を進めており、2013年秋から三菱ふそう製の新型自走式標識車「キャンター E-CELL」を使って、高速道路で「磁界共鳴方式」のワイヤレス給電実証実験を開始するそうです。

 自走式標識車 (出展 NEXCO中日本)

ワイヤレス給電が実現すれば車両に搭載する駆動用2次電池の容量が小さいEVでも、非接触の継ぎ足し充電により、長時間走行できるようになる可能性も。 

2次電池はEVのコストの多くを占めており、2次電池が少なくても済む非接触給電技術は車体の軽量化や省スペース化を含めてEVの普及拡大に大いに役立ちそう。 

NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)も2015年頃に街中の交差点付近で走行中の給電実験を開始、2020年頃の実用化を目指している模様。 

こうした動きを受けて国際電気標準会議(IEC)/国際標準化機構(ISO)の共同部会がワイヤレス給電技術の国際標準化作業を急いでいるようで、2014年までに国際標準制定に向けて動いています。 

通信用周波数帯やコイル形状について2014年までに技術指針(TS)として提示、その後、2017~2018年頃までに最終的に国際標準(IS)化される見通し。 

今後EVユーザーが「磁界共鳴方式」や「電磁誘導方式」といった給電方式や機器の種類に左右される事無く、何処でも同じように充電できるようにする必要が有る事は言うまでもありません。

こうした非接触充電技術が実用化されれば、普及が足踏みしているEVやPHV充電の利便性が飛躍的に向上することは明白で、早期実現が待たれます。 

※磁界共鳴方式
2006年に米マサチューセッツ工科大学(MIT)のMarin Soljacic氏の研究グループが提案した技術。電磁誘導方式と比べて伝送距離が長いので、小型車からSUVまで車高の違う車両に同一機器で対応可能。この技術に関する多くの特許を持つのがMITと同大学からスピンアウトしたWiTricity(ワイトリシティ)。100件以上の特許を米国で出願しており、それらの特許を回避しながら磁界共鳴方式を実用化するのは難しいとされている。 

■NEXCO中日本 Webサイト
  http://www.c-nexco.co.jp/news/2957.html 

■WiTricity Webサイト
  http://www.witricity.com/index.html

■NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)
  http://www.nedo.go.jp/ 

■磁界共鳴方式送電について (TDK)
  http://www.tdk.co.jp/techmag/knowledge/200912u/index2.htm 

■電磁誘導方式 非接触給電システム (日産)
  http://www.nissan-global.com/JP/TECHNOLOGY/OVERVIEW/wcs.html 

■電磁誘導方式 非接触給電システム (昭和飛行機工業)
 http://www.showa-aircraft.co.jp/products/EV/catalog_kyuuden_2011-07.pdf 

〔関連記事〕
・急速に進む? 日産がEV「ワイヤレス給電」を2014年に採用か?
 https://clicccar.com/2012/12/03/206439/ 

・スマホも電気自動車も充電にケーブルが不要な時代がやってくる
 https://clicccar.com/2012/10/03/200409/

・最近EV界を賑わす非接触充電て何?
 https://clicccar.com/2011/05/11/21957/

 (Avanti Yasunori) 

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この記事の著者

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Avanti Yasunori

大手自動車会社で人生長きに渡って自動車開発に携わった後、2011年5月から「clicccar」で新車に関する話題や速報を中心に執筆をスタート、現在に至る。幼少の頃から根っからの車好きで、免許取得後10台以上の車を乗り継ぐが、中でもソレックスキャブ搭載のヤマハ製2T‐Gエンジンを積むTA22型「セリカ 1600GTV」は、色々と手を入れていたこともあり、思い出深い一台となっている。
趣味は楽器演奏で、エレキギターやアンプ、エフェクター等の収集癖を持つ。
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