スバル「XV HYBRID」の走りは、良くも悪くもハイブリッドらしからぬ自然なフィーリング!

プロトタイプではありますが、富士スピードウェイ内で試乗したXVハイブリッドは、いわれなければハイブリッドとは気づかないほど自然なフィーリングが味わえます。まず、ハイブリッドらしさを実感するEV(モーター)走行は、40km/h以下で「SI-DRIVE」が「I」モード時のみで作動します。

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また、インパネやステアリングスイッチを見渡してもEVモード用スイッチは存在しません。さらに、早朝ゴルフに出かける際に、静かな住宅街から出発する際もエンジン始動一発目はEV走行にはならないわけです。

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スバルの技術ならいきなりのEV走行も可能なはずですが、ハイブリッドシステムのチェックなどマージンを取っているそうで、そこはマジメなスバルらしく、しかも初めてのハイブリッドだからしょうがないのでしょうか。

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ですので、EV走行はバッテリーの残量が残っていてもエンジン始動1回目では不可で、たとえば駐車場内での移動や深夜に帰宅する際などになります。

しかもEV走行の作動領域は、40km/h以下という速度も、距離は不明ですが可動距離もかなり制約があるうえに、少しアクセルペダルを踏むだけでエンジンが始動してしまうため、クリープ走行かそれに近い極低速域用になっています。

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しかし、気になる加速フィーリングは、ガソリン仕様よりも明らかに力強さを感じさせるもので、ガソリン仕様は「I」モードだと急な上り坂ではモアパワーを抱かせますが、最高で10kW(13.6ps)/65Nm(6.6kg-m)のモーターアシストにより急坂でも十分な加速を得られます。

さらに、「S」モードに切り替えれば猛烈な速さとはいえないものの、痛快な走りを堪能できますし、パドルシフトも駆使すればなかなかアグレッシブな走りも可能です。

加えて、サーキットのショートコースで実感できたのは、リヤにニッケル水素電池などのハイブリッドシステムが積まれたため、前後重量配分が少し改善しているバランスの良さ。重心の低さも印象的で、リヤはスタビライザー径のアップやステイリヤフレームの追加で操縦安定性も向上しているほどです。

乗り心地は、舗装状態が悪い場所ではややバタバタするシーンも散見されます。タイヤはガソリン仕様と同じヨコハマの「ブルーアース」ですが、ハイブリッド専用の別モノとして専用開発されており、より転がりやすいのはもちろん、静粛性も向上しているのは朗報。

ハイブリッドらしからぬという点では、回生ブレーキの減速フィーリングもそうで、思ったよりも減速感は得られない気がしますが、ガソリン車からの乗り換えでも違和感のない感触を目指したとなると納得できます。一方で、ハイブリッドらしさを求める向きにはインパクト不足と感じるかもしれません。

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スバルから出るハイブリッドというと、トヨタからの膨大な技術供与があったと思われますが、直接「これ」と目に見えるものはなく、駆動用バッテリーの制御などはむしろプラグイン・ステラなどからの蓄積も活かされているようです。

初めてのハイブリッドとしては完成度が高く、あとはJC08モード燃費20km/Lに対して、どれくらいの実燃費を達成できるか、価格がどれくらいになるかが成功へのカギになるはずで、スバルの営業部隊も当然ながら重々承知なはず。

なお、人気グレードはほかの車種から見てもハイブリッド専用に開発されたEyeSight装着車になると予想できます。ハイブリッドとアイサイトの協調制御で最大10%の実燃費アップ効果を生むとのことですから、初期費用は嵩みますが安全と実燃費を重視するならやはり見逃せません。

(塚田勝弘)

この記事の著者

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塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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