100万円台前半からポルシェ・ボクスターが、200万円台で911が買える時代になってます

 クルマ好きなら誰でも一度は憧れたことがあるスポーツカーといえば、ポルシェ社のモデルではないでしょうか。いや、これには語弊があるかもしれませんが、「憧れてはいなくとも、気にはなる」「ライバル視しているから、興味はある」という人も含めたら、いわゆるクルマ好きの中でのポルシェ注目率は100%に近いといっていいでしょう。


 さてそんなポルシェ社のスポーツカー、具体的には最も有名な「911」と「ボクスター」の中古車が実は今、それぞれ200万円台と100万円台にて余裕で買えてしまうってご存じでしたか?
「えー、でもそれって超ぼろぼろで買った瞬間に修理代が100万円単位でかかるんじゃないの?」と思った方、ちょっと待ってください。実は、きちんとした個体選びをすれば、本当に100万円台、それも120万円など「100万円台前半」からポルシェ・ボクスターが、200万円台中盤から(もちろん中には200万円台前半もあります)ポルシェ911は買えてしまうのです。
 それも「エアコンも効いて、日常使用に使える」モデルが。つまり、これ1台ですべてのカーライフがまかなえるんです。
 ワゴンRの新車(FXリミテッド)がノンターボモデルでも124万9500円するご時世に、同じ予算でポルシェ・ボクスターが買えてしまう。ステップワゴンの最低グレード「G・Eセレクション」233万1200円を出す気があればポルシェ911に乗れる。さあ、どうします!?


 しかしながら、当然ではありますがボクスターの全モデルが100万円台で購入できるわけではなく、同じく200万円台で911全モデルが買えるわけでもありません。
 それでも狙えるモデルが少ないというわけではないのです。具体的にはボクスターなら初代モデルの「986型」と呼ばれるモデルなら全部「選び放題」。つまり初期の排気量が2.5Lのものから後期の2.7Lも、そして途中で追加された3.2LのSモデルも。
 さらに言えばマニュアルミッションでもティプロトニック(ポルシェ社はオートマチックをこう呼称します)でも何でも100万円台で選べます。


 そしてポルシェといえば、の911ですが、200万円台で買えるのは以下のモデルです。1974年以降の「ビッグバンパー(巷間では930型と呼ばれることもあります。本来、930とはターボモデルのみを指す呼称ですが)」はノンターボ、ノンプレミアムモデル(スピードスターなど)を除けば全モデル。そしてこれに続く964型では「カレラ2」「カレラ4」という、標準グレード車ならばこれまたマニュアル/ティプトロ問わず全モデルが選べます。さらに「最後の空冷モデル」としていまだに人気の高い993型もティプトロモデルなら十分に射程距離。そして驚くべきは、水冷の初代モデル996型も前期モデルなら標準のカレラに関しては選び放題(ここで言う選び放題とは、ある特定の個体だけの価格ではなく、全国の相場を指して言っています)なのです。
 ……と、ここまで「選び放題」など、いいことばかり書いてきました。しかし、気になるのはやはり購入後の故障やメンテナンスサイクルなのではないでしょうか。
 ところがこの心配も、「ポルシェだから」という気構えは、まず水冷モデルに限って言えばほとんど必要ないです。さらに空冷モデルに関して言えば「空冷911ならではの特徴的なトラブルはあるが、そのトラブルが数十年のノウハウの蓄積により『回避可能』もしくは『起きても対処方法が確立』されていて、『原因不明のトラブルに泣かされる』ということはほとんどない」と言えます。


 具体的に言います。水冷ポルシェこと986型ボクスターと996型911は、国産と同様に定期交換部品をきちんと換えてメンテしてきていれば、「ポルシェならでは」と言えるようなトラブルの発生はほとんど見えてきません。強いてあげるならボクスターの幌が劣化しやすい、というポイントがありますがこれもS2000やロードスターなどの布製トップ車と同等と考えていいでしょう。さらにウォーターポンプの寿命が国産車よりじゃっかん短めの傾向もあるようですが、これは逆に、「他に目立ったトラブルがないため、クローズアップされる」事項でもあるようです。
 というわけで初代ボクスターと996型911はとりわけ初心者におすすめのモデルです。しかしいずれも新車ではありません。また、消耗部品の交換サイクルはきちんと守る必要があります。そしてその交換時にはプロに見てもらうべきです。
 続いて空冷911について。こちらは水冷モデルとは違って、事前に注意すべき点があります。


 まずはビッグバンパー(9300型)モデルについて。このモデルはきちんと整備された個体で、かつ、「クーラーをあきらめるなら」空冷モデルの中で非常に手のかからない、初心者向けの旧車と言えることができます。
 要注意なのは964/993型です。この両車のエンジン(200万円台で買える標準モデル用)は基本的に設計が同一なのですが、ある持病を持っています。それが「かなりのオイル漏れ」。はっきり言って964/993の双方とも、まったくオイル漏れがない個体というのは極めてまれと言えるでしょう。ですから少量の漏れなら問題はないのですが、盛大に漏れるようになったらエンジンを降ろしての整備となります。
 このオイル漏れ、原因はエンジン本体にあるわけではなく、シール部分なのですが、このシール交換をするためにはエンジンを降ろす必要があるのです。
 さてこのエンジン降ろしを含むオイル漏れ修理ですが、これにはざっと数十万円(100万円に近い方)がかかります。高いですね。しかし、このオイル漏れ修理をきちんと行えばその後は長期間にわたってこのトラブルへの不安はなく乗り続けることができるのです。
 つまり、964/993型911に乗るのならば「100万円ほどのトラブル準備費用」を念頭に置いておけばいいということです。しかもこれ、購入直後の全車に発生するわけではありませんし、運良くオイル漏れ修理が終わっているモデルであればラッキーです(それでも「保険」として修理準備金は持っておいたほうがいいです)。
 この他、空冷911には共通した電装系の注意点などはありますが、基本的にはすべてトラブル例が出尽くしていますので大きく心配する必要はないと言えます。


 それからもう一点。964/993型を購入するときはエアコンの効きをチェックしましょう。意外に思えるかもしれませんが、空冷モデルでありながら両車のエアコンは、完調であれば「かなり効きます」。日本の真夏の渋滞にはまっても、もちろん現在の国産新車並みとは言いませんが、「暑い」と感じることはないほど効きます(同年代のラテン車などでは効きが甘いケースが多いのです)。
 この冬の時期に冷風のチェックをするのは難しいのですが、ショップの人に確認を取るのは大事なことです。エアコン系統の修理はポルシェに関わらずかなりの出費になりますから(これは国産車でも同じです)。


 ……さて、以上がボクスター&911の現状とトラブル概況です。皆さんはどのように感じましたか?「完全トラブルフリーじゃないのか、それは困る」という方には、はっきり言っておすすめしません。なぜならいずれも中古車ですし、最新でも10年以上が経過したクルマにおいては、国産車でもトラブルフリーということはないからです。
「メンテナンスに気を使う部分はありそうだけど、もしかして100万円台ボクスター/200万円台911って、自分にも維持できるクルマなのかな?」と思えた人には、クリッカーはおすすめしちゃいます。ただし、もちろんまったくトラブルフリーではありませんし、その中古車を買うお店選びや、中古車選びそのものを失敗した場合には泣きを見ることもありますから、クリッカーでは責任は持てません。
 でも、クリッカーはこう言いたいのです。「いつかはポルシェに乗りたいと思っているのなら、しっかり勉強して『自分が買えるのか』を検討する価値はあるのではないですか」って。
 だって、一度はなってみたいじゃないですか、『ポルシェ・オーナー』に。

追伸:三栄書房からこんな本も出ていますので、興味のある方は是非。

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(ウナ丼)

 

この記事の著者

ウナ丼 近影

ウナ丼

動画取材&編集、ライターをしています。車歴はシティ・ターボIIに始まり初代パンダ、ビートやキャトルに2CVなど。全部すげえ中古で大変な目に遭いました。現在はBMWの1シリーズ(F20)。
知人からは無難と言われますが当人は「乗って楽しいのに壊れないなんて!」と感嘆の日々。『STRUT/エンスーCARガイド』という名前の書籍出版社代表もしています。最近の刊行はサンバーやジムニー、S660関連など。
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