EVスクーターの実力を知るために限界ギリギリまで走ってきた

電気自動車よりも普及の速度が速いといわれるEVスクーター。実際に購入を検討する方も多いはず。しかし、展示会やイベントなどで試乗しようとすると、100m程度の直線を往復して終わり、なんてことが多く、実際にどれだけの性能があるのかを実感するまでには至らない場合が多いですよね。
去る9月30日、EVスクーターの本当の実力を限界まで試してみるために、袖ヶ浦フォレストレースウェイで行われた電気自動車の全日本選手権である全日本EVレースのEVスクーター部門に参加してきました。

筆者が乗ったEVスクーターはヤマハEC-03。今販売されている国産EVスクーターの標準的なモデルです。

ヤマハEC-03
http://www.yamaha-motor.jp/ev/ec-03/ 

サーキットでのレースなら原付自転車の制限速度30km/hを大きく超えて走ることもできますし、電池が切れてしまってもオフィシャルが回収しに来てくれますので安心して全開走行できるのです。

ヤマハEC-03の他にスズキe-Letsも参加。

スズキe-Lets
http://www1.suzuki.co.jp/motor/elets/index.html 

レースはグリッドスタートにより始まります。ここではゼロ発進がどれほどのものかということが試せます。

レースの時間は25分なので全てパワーモードで走ってみようということに。試乗会などではパワーモードにさせてくれないことも多いので、パワーモードで走りきれる経験はかなり貴重と言えます。

スタート直後、パワーモードのEC-03の加速は、同じヤマハの原付スクーターVOXなどの4馬力クラスに比べてかなり鋭い。最高出力が低くてもVOXの倍以上あるトルクが効いているEC-03の方に分があるようです。

スピードのノリもよく、袖ヶ浦の1コーナーを越えてのゆるい上り坂でも48km/hまでは加速します。そこを越えての下り坂、もっと加速するのかと思いきや、49km/hでリミッターが効くのか、それ以上は一切加速無し。しかしエンジン車のリミッターと違い、無理やり燃料カットをするわけでもなくギクシャクした感じは皆無。最高速度制御はかなり安心感があります。

最高速度に関しては、スズキのe-Letsの方が高い。スズキでレースに参加したライダーの方によるとメーター読みで55km/hまでは出るそうです。

コーナリングに関しても、細いタイヤの見た目をかなり裏切ります。袖ヶ浦の全てのコーナーをアクセル全開でクリアしてしまうのです。倒しこんでいっても不安がないのはエンジン車のスクーターに比べて30kgほど軽い車体のおかげでしょう。

電気自動車は同じクラスのエンジン車に比べて100~200kgほど重いのが普通。そのイメージでEVスクーターを見ると完全に裏切られます。ヤマハのEC-03は完全軽量設計で車重56kgですし、特に軽量設計をしていないスズキe-Letsでもエンジン車より2kg軽いのです。

今回出場した国産の2車種、EVスクーターといえども日本製としてのクオリティを持っていますので直進安定性が高く、コーナーリング中の不規則なヨレタ感じなどは皆無。安売りに多いよくわからないブランドの中国製とは明らかに違います。これらは能動的な安全性能に直接かかわってくる部分なので、ケチらずに国産にいった方が絶対にいいと確信しました。

そして、航続距離。パワーモード全開で25分を走った後のメーターを確認すると、走行距離20.1kmでバッテリー残量は最後の1目盛りが点滅。ほぼ使い切っている状態です。筆者の体重は一連の写真をご覧いただいてわかるとおり限りなく3桁に近い2桁。その体重のライダーが全開で走りきってこの距離を完走したことを考えると、カタログの30km/h定地走行での航続距離43kmは現実的な数字なのではないか、と考えます。

ちなみに体重が80kg弱のライダーの方のEC-03のバッテリー残量は2目盛り。航続距離は体重に密接に関係してくることが明らかになりました。

最高速に勝るe-Letsは航続距離が短く、カタログ値で30km。パワーモードとエコモードを適宜切り替えながらでないと完走できないということです。前半全てパワーモードで走った方は後半は電池の残量がほとんど無く、エコモードで何とか走りきったとのことですが、ぶっちぎりトップだったところが筆者以外の全てに抜かれるということになったとのことで、航続距離とパワーのバランスの難しさを物語るエピソードです。

今回、EVスクーターを全開走行してみて、改めてEVスクーターは実用に足るものだという実感を得ました。一日で走る距離が30km以下であれば、通勤や通学などでは間違いなく使える乗り物です。充電も100Vの普通のコンセントでEC-03は6時間、e-Letsは4時間。

金額的にも普通のエンジンスクーターと変わらない程度と考えれば、EVスクーターを選ばない理由はほとんど皆無なのではないでしょうか。

 今回はバイク販売店Power Stationさんのご協力により参戦させていただきました。
http://www.powerstation.co.jp/ 

(北森涼介)

この記事の著者

松永 和浩 近影

松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
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