【新型ワゴンR】カタログ燃費に出てこない、真の実用燃費を向上させるスズキの新アイテム

28.8km/L(JC08モード)という、優れた燃費性能をアピールしている新型ワゴンR。その登場は2012年9月6日です。
デビュー前から燃費性能がアピールされていますが、新型ワゴンRはカタログ燃費だけにこだわっているわけではありません。その証拠に、カタログ燃費には無関係な、実用燃費を向上させるメカニズムを軽自動車として初採用しています。

それが『eco Cool』と名付けられた、蓄冷機能を持つエアコンシステムです。

一般的にエアコン(冷房)が空気を冷やす仕組みは、エンジンによって動かすコンプレッサーが高圧ガスとなった冷媒が、車体前方にあるコンデンサーで走行風などで冷やされ液状冷媒となり、そして室内のエバポレーターで気化するときに空気から熱を奪うことで、冷風を出すという流れになっています。

そのため、アイドリングストップ機能を持つクルマでは、エンジン停止時にコンプレッサーを動かせないので冷房が止まってしまいます。アイドリングストップ時にはバッテリーだけで動かせる送風モードに変わるというのは、コンプレッサーを回せないことが理由です。その対策として電動コンプレッサーという選択肢もありますが、ハイブリッドカー以外には普及していません。

そして、冷房が止まった状態が一定時間続くと、自動的にエンジンを再始動してコンプレッサーを動かし始めるというのが現在のアイドリングストップ機能での主流。つまり暑い日にアイドリングストップが働きづらくなり、それだけ実燃費を稼ぐことが難しくなるわけです。

そこで、新型ワゴンRに採用されたのが、前述した『eco Cool』。エバポレーターに蓄冷剤を一体化することで、コンプレッサーが止まった状態でもエバポレーターによる空気の冷却性能を少しでも維持しようというのが狙い。これによって、快適性を犠牲にすることなくエンジン停止時間を長くでき、結果として好燃費につながるというわけです。

なお、JC08モードの測定ではエアコンはオフにしていますから、この機能を追加したからといってカタログ燃費が向上するわけではありません。あくまでも、ユーザーの快適性と実用燃費をバランスさせるためのメカニズムといえます。
(山本晋也)

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山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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